Post by Dr. Ryukichi Miyabayashi
Country Director (Japan), IMD | ICF Professional Certified Coach (PCC) | Search Fund Investor
IMDのフラッグシッププログラムである OWP(Orchestrating Winning Performance) が始まりました。 学長David Bach と Didier Bonnetによるオープニングリマークから始まり、急速に変化する世界における競争力、変革、そしてリーダーシップについて深く考える一週間の幕開けです。 今年は、53カ国・134社から450名以上の経営リーダーが世界中から集まり、ビジネスと社会の未来を形づくる重要な経営課題について議論を深めています。 オープニングセッションは、IMD World Competitiveness Center所長の Arturo Bris教授。AI、地政学、国家競争力、そして民主主義の未来が、いかに相互に結びつき始めているかを示す、非常に刺激的なセッションでした。 特に印象に残ったポイントは3つあります。 第一に、AIはもはや単なる技術ではなく、地政学的な力になりつつあるということ。AnthropicのClaude Fable 5 / Mythos 5へのアクセス制限に象徴されるように、AIモデルや先端技術へのアクセスそのものが、国家安全保障、政治的影響力、地政学的な力関係と深く結びつき始めています。AIは企業の生産性を高めるツールであると同時に、国家間のパワーバランスを左右する戦略資産になりつつあります。 第二に、競争力の源泉が「市場の開放性」だけではなくなっているということです。強い制度、明確な国家戦略、そして規制・資本・人材を先制的に動員する力を持つ国々が、競争力を高めています。今年のIMD World Competitiveness Rankingで上位に入っているUAEは、その象徴的な例の一つです。かつて競争力は、グローバリゼーション、官民連携、教育、インフラ、産業政策を中心に語られてきました。しかし今は、テクノロジー、資本、人材、規制、そして国家運用能力をどれだけ統合的に動かせるかが、より重要になっているように感じます。 第三に、これからの時代に問われるのは、テクノロジーをどう使うかだけではなく、自国や社会を守るテクノロジーを自ら築けるかだという点です。 “Build or be ruled” という言葉が、非常に象徴的でした。自らの技術基盤を持たなければ、他国や他者が設計したプラットフォーム、ルール、価値観の上で競争せざるを得なくなる。これは日本にとっても極めて重要な問いです。 日本には、世界に誇る企業、研究者、エンジニア、そして現場力があります。一方で、AI時代の競争力を考えるうえでは、独自の技術基盤、資本形成、国家戦略、規制設計をどう結びつけていくかが、ますます重要になります。 AI時代の競争力とは、単に新しい技術を導入する力ではない。 それは、どのような技術を、誰のために、どのような原則で社会に実装するのかを設計する力なのだと思います。テクノロジーに適応するだけでなく、テクノロジーを人間と社会の側に引き戻すこと。これからの経営リーダーにとって、最も重要な問いの一つになるのではないでしょうか。 #IMD #IMDimpact #OWP #OWP2026